あじくりげ　２０１２年５月号
ジョン　ギャスライトのカルチャー食！#４
『花よりダンゴ！』
ジョン　ギャスライト
走れぇ！！！僕は先輩の一声で公園の桜の木を目指して全力疾走！僕たちとほぼ持ち物が同じサラリーマンが朝8時だというのに公園にたくさんいたのだ。みんな桜の木の下に向かって駆け込んでいく。負けちゃいられない。花見の場所取り代表選手に選ばれた僕は必死で見ごろの桜の木を探してその下に滑り込み！やったぁ！まずは場所取り成功。日本の花見が初めての僕はその日の仕事が花見の場所取りの為に一日費やすのが仕事と聞いて、なんてラッキーと思った。日本のお花見、嬉しいな、なんたって給料もらいながら花見の準備！僕たち３人は持ってきた段ボールを下に敷きつめその上にブルーシートを広げた。周りに杭を打ち付けロープを張りめぐらしたら場所とり完成！
次は見張り番と買い物班に分かれて僕は一人で見張り番になった。だんだん暇になってきた僕は退屈になって来て周りに同じ様に場所取りで来ている人と友だちになった。みんな今年入社したばかりの新入社員だった。この花見の場所取りはどうやら新人の仕事らしい。
一人での公園の場所取りもだんだん寒くなって来て僕は余った段ボールの犬小屋くらいの小さな場所を作って他の二人の帰りを待っていた。間もなく他の二人が大量のビールとお寿司やオードブルの詰め合わせを買ってきた。僕たちはおつまみセットを作りながらまだ少し冷たい風を感じながら夕方までそこで番をし続けた。やっとちらほら社員の人が来た頃は体もすっかり冷えて、桜も見飽きて暖かいお家に帰りたくなってしまっていた。5時を回ると社員の人たちが大勢やってきた。そこからは僕たちはほとんどボーイ役だ。
新入女子社員に囲まれて上機嫌の上司、ペコペコ頭をさげながらビールをついで回る中堅、すごい勢いでぐいぐい飲みだす男性社員、とにかく誰ひとりとして桜をゆっくり眺めている人はいない。乾杯の連発とお酌のやり取り、カラオケ歌いまくってあっという間に真っ暗になってきたが周りの人たちがギンギラギンに明るくなってきた！踊りだす人、大声で笑う人、上司も結構ヘロヘロに酔っぱらってきて初めての花見で花をほとんど見ずに飲んでたべるのがお花見だとわかった。これが本当の花より団子？だと知った日だった。
挙句の果てに10時まで盛り上がりの末、みんなによろしく！という言葉を掛けられ僕たち3人はそれからお片付けだった。なんと臭い食べ残しの始末とお掃除。僕は絶対、来年はこの甘いワナに引っかからないようにと心に誓ったのだ！
それ以来僕は日中のお散歩花見が一番好きになった。ピンクの花弁が青空をバックにしているところが一番美しい！そうしたらみんな団子より花！になるに違いない。